著者/湯木貞一 発行/暮しの手帖社 初版/1982年2月
かの料亭「吉兆」の創業者、湯木貞一氏の語りおろしによるシリーズ。
聞き手は花森安治氏。
全4巻のうち、私はまだ1巻目の途中を読んでいるところ。それも、図書館で借りてきて。
これは、超一流料亭の主人がプロの料理について語っている本ではない。
「家庭料理を大事にしましょう」と、さまざまな身近な料理の作り方やコツを、季節感とともに伝えている。
ダシはこうして取るんですよ。
この素材はこんな風に切った方がいいですね。
鮮度の落ちた魚には、この調理法が一番ですね。
煮物を煮返す時は、こうすると味が保てます。
小さなことも丁寧に、繰り返し、易しく語られていて、読むほどに「この通りにやってみたい」と思うことが増えてくる。
「大根おろしが辛すぎたら、布巾に包んで水洗いする」など、「えぇっ!?」と思う技も散りばめられている。
中でも意外だったのは、「味の素」の使い方がひんぱんに出てくること。
使いどころ、使わない方がいいところ。
私はこれを読んで、うちの台所に眠っていた味の素を使い始めた。もし夫にとがめられたら、「吉兆 吉兆」とまじないを唱えてやろうと思う。
一読しただけでは、この頭に入ることはわずかだが、台所に立った時に、「まずミリンを煮立てて」とか「日本酒を使うなら最初か最後に入れる」など、ふっと天の声が聞こえてくる。
背中を押して励ましてもらっているようで、きっといつまでもこの本を頼りにしていきそうな気がする。
その前に、買えとも言われそうだが。
↓ここでね。
px.a8.net/svt/ejpPR